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FashionTechスタートアップのスタイラーが見据える未来の購買体験

 

皆さんは日頃どこで、どのように洋服を買っていますか?

 

「こんなTシャツないかな?」

「こんな場面で使える黒いズボンが欲しい!」

 

と、何となく欲しい物のイメージをしているものの、どこでどのように探せば見つかるのかわからないということはありませんか?

そんな“何となくこれが欲しい”に対して、アパレル業界で活躍するプロが提案してくれるサービスがあるんです。

FashionTechスタートアップのスタイラー株式会社(以下スタイラー)が提供するファッション・アパレル店舗向けのO2Oサービス「STYLER」。

私、服好きの編集員Jは、ファッションのみに留まらないスタイラーが目指すビジョンについて、スタイラーCEOの小関翼氏に伺いました。

目次

・Amazonを経た起業背景

・「STYLER」とは

・会話型UI/UXでアジアのライフスタイル市場を開拓する

・エンジニア・デザイナーから見た、スタイラーの面白さ

・「〇〇×Tech」企業に見る、これからのビジネス競争

・終わりに

(読了8分)

Amazonを経た起業背景

CEO 小関 翼(Koseki Tsubasa)

東京大学大学院 学際情報学府を修了後、三菱東京UFJ、Lloyds TSB Bank plc、Amazonでの職務経験を経て、スタイラー株式会社を設立。大企業で勤め上げるよりも、自身のオピニオンを出し、社会にインパクトを与えるような仕事をしたい願望があったと小関氏は語る。ちなみに、大学院生の頃は物書きにもなりたかったと言う。

 

小関 金融機関に勤めている時は、Web業界との接点があまりなかったので、将来の起業を見据えた上で、Amazonへ転職しました。入社して改めて、Amazonは徹底的にユーザー体験を考えている素晴らしい会社だと感じました。「安く、多くの選択肢から、便利に物を買いたい」というユーザー心理を理解し、実現している。

しかし、その一方でAmazonには苦手としている分野もあります。Amazonのような、いわゆるカタログ状にアイテムを並べた検索型のUI設計がなされているECサイトでは、自身が知っているもの以外の商品は購入しづらいのです。

洋服やライフスタイル用品など、ある程度の知識が必要になる買い物はためらわれる傾向にあります。必然的に、日常的に利用している消費財はECサイトで、新たに欲しい洋服などは店舗に赴き店員と相談しながら購入を検討する。

これはごく当たり前の光景だとは思いますが、オフラインの購買体験はまだまだ不便なのではないかと考えています。

家にいながらどのような商品がどこにあるのか分からないし、店舗に行く前に詳細確認ができなかったり、一度お店を離れれば、お店のスタッフとのコミュニケーションが取れなくなったり……。

そういった現状を踏まえて、購買体験の刷新をするためにスタイラーを立ち上げました。具体的にはオンライン上でも対面で接客されているような体験、オフラインで対面している際にもWeb的な利便性を感じる体験を目指しています。

 

「STYLER」とは

「STYLER」内のユーザーの投稿が見られる「POST」

 

スタイラー株式会社が運営する「STYLER」とは、アパレル店舗とコンシューマーを繋げるO2Oサービスである。「こんなTシャツが欲しい」とユーザーが投稿すると、登録店舗が画像と共に、おすすめアイテムを提案してくれる画期的なサービスだ。

また、ユーザーは自分で投稿をしなくても、他のユーザーの投稿と店舗からの提案をもとに、自身の好みのアイテムを探し出すことができる。

加えて、登録店舗情報や店舗が発信しているアイテム単体でもチェックが可能なので、お気に入りのブランド・アイテムが既にあるユーザーだとしても「STYLER」を活用できる。

また、稼働率が100%の店舗は存在し得ないので、お客さんが訪れない空き時間はどうしても発生してしまう。そういったスタッフの空き時間に「STYLER」内のユーザーの疑問に答えることで、潜在的な顧客へのリーチを可能とした合理的なサービスだ。

 

「STYLER」内の投稿されたアイテムが見られる「ITEM」と、店舗の情報が見られる「SHOP」

 

−登録店舗の審査基準はありますか?

 

小関 審査基準は「価格」以外設けていません。基本的に我々のセンスで選ぶようなことはありません。”良い服” や “良い店” というのは、ユーザーが選ぶことが重要だと考えています。

ただ、お店の価格帯は絞る必要があるのです。例えば、ECではよくあることですが、web上で3千円と3万円のシャツが並べられているとします。掲載されている写真のクオリティー次第で、3千円のシャツが3万円より良く見えてしまうことがあるんですね。

ですので、画像のクオリティーに左右されないであろうミドル価格より上の商品を取り扱う店舗だけを、スタイラーでは扱っています。シャツならば、1万円前後からのものを取り扱っているところになりますね。

 

−ユーザーの投稿内容は審査しているのでしょうか?

 

小関 公序良俗に反するか以外は、ユーザーの投稿を審査していません。なぜなら、「STYLER」のサービスとしての強み・本質は、ユーザーの投稿、ニーズがリアルタイムで流れるところだからです。

もちろん、雑多なニーズが増え過ぎてしまうと、ショップが対応しきれなくなり、情報の質が落ちて見ているユーザーの満足度が下がってしまいます。

「食べログ」「Retty」などの口コミサイトを利用して飲食店を探す際に、サイト内のレビューを見てお店の情報を入手しますよね? ただ、レビューをチェックする人は多いですが、レビューを投稿する人は、全体の割合でいうと少ないのです。

それは「STYLER」にも同じことが言えて、投稿するユーザーよりも、投稿をチェックして情報収集をするユーザーの方が多いので、そのようなユーザーのニーズと乖離し過ぎている投稿が集まることは避けたいとスタイラーでは考えています。

両者のバランスは悩ましいところですが、”そういう物ほしいよね” と多くの人が思うような投稿があることが、サービスとして一番望ましいですね。

 

−ECサイトで対応できないような漠然としたニーズだとしても、「STYLER」では応えることができるわけですね?

 

小関 その通りです。具体的に「これがほしい!」 という時もあるとは思いますが、「こんな感じのものがほしいんだよな~」 と、漠然と欲しい洋服のイメージしかない場合が一般的には多いのではないかと考えています。

しかし、これまでそのような買い方に合わせたサービスがなかったので、その一連の購買体験を改善しようと「STYLER」では取り組んでいます。

 


スタイラーのオウンドメディア


「STY LER」のサービス内には、ファッションにまつわる記事を取り扱うオウンドメディア「STYLER MAG」がコンテンツを配信している

 

−スタイラーのオウンドメディアでは、服が好きな人にとって、読み応えのある重厚なコンテンツを取り揃えている印象を持ちました。どのような運営方針なのでしょうか?

 

小関 オウンドメディアのコンテンツ内容は、ユーザー、店舗スタッフ、「STYLER」運営チームの良好なコミュニケーションを目指すものになっています。余談ですが、オウンドメディア経由でサービスの利用を始めてくれるユーザーも多くいます。

例えば、”オフィスに履いていけるスニーカーはありませんか” という投稿があるとします。それに基づいて店舗からの提案が来ることでコンテンツが増えていくと、それを見て楽しんでくれるユーザーが増えます。

そういった “見て楽しんでくれている層” も「STYLER」では大切にしていますので、ボリュームの大きい投稿はその内容を記事化して配信しています。分かりやすく言うと、ユーザー同士のコミュニケーションを飲食店情報としてまとめている「Rettyまとめ」と近いイメージですね。

 

会話型UI/UXでアジアのライフスタイル市場を開拓する


アジア圏でのあらゆるコミュニケーションツールはSNS??


小関 アパレルなどのライフスタイル市場は、売り手と買い手の間に商品の情報差があるものなのです。必然的に、購入を検討するときにはオフライン(店舗)でのコミュニケーションが必須なりますよね。

面白いことにアジアの発展途上圏では、こういった「購入」の際、SNSでコミュニケーションを取ることが当たり前になりつつあります。日本などの先進国では、プライベートでSNSを活用する以外の利用方法はあまり想像できないかも知れませんが、これには明確な理由があります。

日本などの先進国では情報メディアがそれぞれ順番に進化してきました。紙媒体から、電話、ラジオ、テレビ、PC、携帯、スマホと順を追って。それぞれのツールに合わせて、カタログ通販やテレビショッピング、ECといった具合に、コマースも順に変化を遂げてきました。

しかし、アジア諸国では、一足飛びにスマホが普及しているんです。PCを一人一台持つ前に、スマホを一人一台持つんですよ。そういう方たちの購買意思の決め方は、PCで検索したり、本でリサーチする方法よりも、SNSに投稿やメッセージを送って意見を求めることが多いのです。

スタイラーでは、そういったオンラインで分業する購買体験がやがて、一般化すると考えていて、そのお手伝いができればと思っています。

 

−ファッションに限らず、オンラインでの購買体験の改革をスタイラーとして取り組む可能性もあるということでしょうか?

 

小関 スタイラーでは、ファッション・アパレル業界だけではなく、最終的に「STYLER」でユーザーが服から他のライフスタイル系の商材まで、全ての購入検討ができるような面白いサービス提供ができるのではないかと思っています。

そのために、まずはアパレル分野できちんとしたサービスを提供し、徐々に他分野へとサービス展開をしていきたいと考えています。

単に店舗スタッフとユーザーがやり取りをするサービスはありますが、 “1対1”のコミュニケーションは基本的にMessengerやWechatといったプラットフォームに収斂します。「STYLER」はそれらのプラットフォームと連携できるよう”N対N”でコミュニケーションが楽しめるよう設計されています。

ウェブサイトのお問い合わせをチャット式UIで行うことも重要ですが、あくまで既存顧客への”1対1″ のカスタマーサポートです。そういった対応方法は、電話から問い合わせ方法がチャットにリプレイスされただけで、新規顧客を直接的に巻き込むものではありません。

スタイラーは、不特定多数のコミュニケーションの場としてオープンなプラットフォームの提供を目指していて、かつオフラインのコマースと繋がっているという点で競合が存在しないのが良いですね。

 


「STYLER」の海外展開


 

−スタイラーでは、既にベトナム支部でアジア展開に向けたサービス開発を行っていますが、今回Wantedlyで台湾での幹部候補の募集をされています。スタイラー設立から2年。台湾を取りに行く具体的な理由とは何でしょうか?

 

小関 台湾はアジア圏の中でも消費社会が進んでおり、メディアもその他中華圏への発信力が高いです。これが台湾へ展開する主な理由です。

例えば、中国から日本に来る観光客の中には、台湾メディアに紹介された日本の情報を元に来ている方も多くいます。ですので、台湾進出の目的は、市場参入ももちろんですが、その後に考えている中国市場への参入のために良いステップになるのではないかと考えています。

さらに、中国のみならず、インドネシアやマレーシアなどの東南アジア圏もゆくゆくは視野に入れたい。

アジア圏のアパレル市場規模はとても大きい。アメリカなども当然大きいのですが、アジア圏は特に人口が多いので、比べてみると、規模の大きさが改めてわかるかと思います。

 

経済産業省のファッション業況調査によると、中華圏は113兆円、アメリカは63兆円のファッション市場規模だという。

 

エンジニア・デザイナーから見た、スタイラーの面白さ

*ここから、デザイナーの長峯えりな氏も交え、エンジニア・デザイナーから見たスタイラーの魅力について伺った

デザイナー 長峯えりな(Nagamine Erina)

大手アパレルのアダストリアにて副店長を経験した後に、Webデザイナーを目指しデジタルハリウッドに入学。Web開発会社のLIGに勤務した後に2016年にスタイラー株式会社に入社。

 

長峯 私はデザイナーとして、企業としての方向性どういった技術を用いた開発なのか、開発のスピード感などを、働く上で重要視しました。

大手や老舗企業だと業績がある分、すでに決まっていることや、開発前の段階で議論すべきことが多いので、スムーズに開発を進められない印象があります。また、前職では受託開発でしたので、クライアントの希望に沿った開発を行っていました。

スタイラーのように、自社サービスを持つスタートアップの魅力の一つは、受託開発とは真逆の、個人の意見をサービスに反映しやすいという点にあると思います。

 


長峯氏がSTYLERに参画するまで


長峯 学生時代はデジタルハリウッドに通っていまして、そこで開催された「FashionTech Summit」というイベントで、スタイラーを知りました。その後、前職の受託開発に携わりながらも、ファッションに関する仕事がしたいと思っている中で、Wantedlyのスタイラーの求人を見つけ、入社を決めました。

ファッションをベースとしているスタートアップも数が少ないというのもありましたが、スタイラーの「お店とお客さんがつながりを持てる場所」を提供するというサービスコンセプトに惹かれたのが、その一番の理由です。

 

小関 実は長峯は、アパレルの店舗で働いていた経験もあるんですよ。

 

長峯 はい、実は5年ほど店舗販売を行なっていました。なので、何らかの理由で店舗を訪れないユーザーから、「実物を手にとって検討できないまま、ECサイトで買うしかなかった」という声はたくさん聞いてきました。「STYLER」は、そのような壁を超えられるサービスだと思っています。

 

−スタイラーにいるスタッフは、やはりもともと服好きの方が多いのでしょうか?

 

小関 もちろん、服好きなメンバーは多いですよ。しかし、決して採用基準ではありません(笑)。

 

−スタイラーの採用基準で、一番重きを置いている点はなんでしょう?

 

小関 業務に対するスピード感社交性に加え、何かしらのスペシャリティも持っているかどうかを見ています。どれか一つでも欠けていると、スタートアップでの活躍は難しいのではないかと思っています。

作業風景

スタイラーは、本来あるべきストレスフリーな購買活動の実現を目指す

「〇〇×Tech」に見る、これからのビジネス競争

小関 アパレル業界の市場規模はとても大きい。ただ、岐路に立たされている部分があるのも事実です。2013年にアベノミクス政策が実施されるまで、日本では20年近くデフレが続いていました。そのデフレが終わった今、流通チャネルにも変化が現れると我々は考えています。

具体的には、ユーザー体験を軸とした、ビジネスの競争化が始まる。ユーザー体験を刷新した新たなモデルと既存の流通チャネルが勝負する事態が起こると予測しています。

現在、その動きを世間では「〇〇×Tech」と呼んでいます。既存のビジネスとテクノロジーが融合して、新たなビジネスの形を作ってゆく。今まで業界で慣習化されていた事柄や、常識とされていたことが刷新されていく。

さらに踏み込んで言ってしまえば、刷新された慣習、常識自体も一般化してしまえば、「〇〇×Tech」という言葉自体の意味が無くなる。当たり前になれば「〇〇×Tech」と誰も言わなくなりますよね。

しかし、日本では刷新の一般化が難しい部分もあると考えています。企業の組織は一般的に、ピラミッド型に形成されています。上に戦略部門があり、下に戦術が降りオペレーションを実行する部門が存在します。

このような構図を取るのですが、日本の既存企業の強みは、現場のオペレーション部門なのです。ストラテジー(戦略)が弱いと言ってもいいかもしれません。日本では、上(戦略)が代わっても会社はあまり変わらない傾向にあります。

アメリカの企業は、まったく真逆の考え方でして、オペレーションの熟練具合よりも戦略が重要だと考えることが多く、上が入れ替わることで、戦略が変わり、それに合わせてオペレーションもガラリと変化する。

海外との組織内変革への対応スピードの差は、これから日本の既存企業が考えていかなければならない部分だと思います。購買体験を刷新する動きの中で、既存企業が組織的な障害という理由で対応しきれないという事態が予想されるからです。

 

おわりに

「STYLER」のサービスとして面白い点は、ユーザーの購買行動をECサイトのようにオンライン上で完結させないところにある。

店舗スタッフのやり取りの中で、ユーザーが気に入ったアイテムを見つけ、店舗に足を運ぶ。小関CEO率いるスタイラーは、オンラインとオフラインを融合させた新たな購買体験の創出を担っていると言えるだろう。

「STYLER」がライフスタイル分野で、どのようにサービスを成長させていくのか。その動向を追っていくのが、今から楽しみで仕方がない。

 

余談ではあるが、オウンドメディアで取り上げられているSEPTISというお店は、偶然にも本記事を執筆した私、編集員Jもしばしば足を運んでいる店舗であった。

その記事から、通っていた自分もまだ知らなかったお店の良さを知ることができたわけだが、そういった一つ一つのコンテンツからも、FashionTechとして真摯に取り組むスタイラーの姿勢が垣間見えた。

 

スタイラー株式会社

HP:https://styler.link/

スタイラー株式会社はライフスタイル分野で展開する会話型コマースのリーディングカンパニーです。

【会話型UI/UXでアジアのライフスタイル市場を開拓する】をミッションのもと、今までにはない新たなサービスを企画・運営しています。

当社のサービスは、ユーザーと“プロ”とのコミュニケーションを可能にし、双方がコミュニケーションを取れるSNSで、まだ知らなかった新しい出会いを実現します。

私たちが夢見ているのは、ライフスタイルの可能性を拡げて人々の生活を「もっと」豊かに楽しくすること。ユーザー体験をゼロベースから考えて、サービスを企画し、未来にありうべき、最もストレスフリーな購買体験を実現していきます。