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保護犬猫と里親を結ぶWebサービス「OMUSUBI」を立ち上げた理由

 

保護犬猫と里親を結ぶWebサービスがある。オフィスには社員犬がいるらしい。

犬や猫にコードレビューをしてもらえたりするのだろうか? 可愛いワンちゃんネコちゃんに「こんなクソコード書いてんじゃねえワン」とぜひ吠えられたい、癒されたい。

ということでリサーチ。

目次

・保護犬猫と里親のマッチングサービス「OMUSUBI」とは

・”人が動物と共に生きる社会”を目指す

・ペット業界の今

・動物と働けるオフィス

・おわりに

(読了3分)

保護犬猫と里親のマッチングサービス「OMUSUBI」とは

犬と猫を飼い始めるに至るには、様々な経路がある。ペットショップはもちろん、知り合いづてに引き取ることもあるだろう。他に、まだまだ一般的な経路とは言い難いが、保健所から引き取るという選択肢もある。

環境省の統計情報によれば、保健所で殺処分されている個体は2004年の約39万5000頭から、2015年には約8万3000頭まで減少している。

PEDGEによれば、その理由は二つある。一つ目は、民間の動物愛護団体の引き取り数が増加したこと。二つ目は、2012年の動物愛護法の改正により、安易な引き取りの申し出を拒否できるようになったことであるという。

減少傾向にあるとは言え、動物たちが殺処分されている現実は変わらず、そんな中2016年11月末にリリースされた「OMUSUBIというサービスがある。

 

「OMUSUBI」Webサイトより

 

OMUSUBIとは、株式会社シロップ(代表取締役:大久保泰介、以下シロップ)が提供する保護犬猫と里親のマッチングサービスである。

「OMUSUBI」ではまず、パソコンまたはモバイルのブラウザ上で、登録されている保健所の犬猫のプロフィールから、飼いたい子を見つける。

そして、保護団体に申請し、申請者に飼育能力があるかどうか、お見合いやトライアル(2週間ほどの試し飼い)を経て判断され、正式に譲渡される。

保護団体が動物の飼育をするにも、不妊去勢手術や治療、食事などの費用がかかる。正式譲渡の際には、保護団体が指定した寄付金を申請者が支払う仕組みとなっている。

 

“人が動物と共に生きる社会”を目指す

殺処分問題に向き合うシロップの中の人、大久保氏、山本氏、渡邊氏のお三方にお話を伺った。インタビュー風景写真の左から、山本氏、渡邊氏、大久保氏と記者。

 

CEO 大久保泰介(Ookubo Taisuke)

2012年同志社大学経済学部卒。大手IT系企業にてグローバル・新卒採用プロモーション、採用戦略、財務管理会計を経験。大学在学中に英・ロンドンでサッカーをする傍ら、ユニクロで+Jプロジェクト等のプロモーション業務に携わる。日本において人とペットが一緒に暮らしづらい環境であることを実感し、2015年にシロップを創業。

 

―保護犬、保護猫と里親のマッチングサービスを立ち上げたきっかけは何でしょうか?

 

大久保 ドイツやイギリスで生活していた時に知ったのですが、ペットショップがまったくと言っていいほど無く、ブリーダーか保護施設から保護犬猫を飼うことが一般的です。

そこで、保護犬猫とペットショップの犬猫というのは、なにも変わらないじゃないかと感じました。両者が同じなら、間違いなく保護犬猫を引き取る方がいいじゃないかと思ったことが原体験でした。

加えて、ドイツやスイス、イギリスをはじめとした西洋諸国の飼育文化は日本と比べてとても進んでいて、日本でもその文化を持ち込みたいと考えました。

あちらでは、しつけがしっかりされていて、ノーリードでペットと散歩をしたり、電車にペットと乗れたり、公共施設にペットと入れるんですよ。

 

大久保CEOと社員犬コルク

 

大久保 日本では、ノーリードは基本的にダメじゃないですか。犬が何をしでかすかわからないから。でも、それって犬の問題ではなく、しつけができていないという飼い主側の問題なんですよね。

ペット先進国では、飼い主のしつけがしっかりしているから、そのような暮らしが可能なんです。

そういった様々なペットにまつわる日本とのギャップを目の当たりにし、「ペットを飼い、育て、思い出を作る」という一連の環境のすべてをITの力でより良い環境にできるのではないかと考えました。前職のGREEを経て、起業に対するイメージをしっかりと持つことができ、シロップの創業に至りました。

 

 


飼い、育て、思い出を作る


ペトこと編集長 兼 広報  山本恵太(Yamamoto Keita)

2009年慶應義塾大学総合政策学部卒。2016年8月より現職。2015年より「ペトこと」の立ち上げに参画。 以前はWebメディアで編集記者、IT系企業で広報に従事(PRSJ認定PRプランナー)。大学在学中に関わった盲導犬育成の支援活動がきっかけとなり動物好きに。

 

シロップ社では、OMUSUBIに加え、2つのサービスを提供している。

ペトこと」は、獣医をはじめ、動物に関わる専門家が執筆するメディアだ。飼育にまつわるペットの健康に関する情報以外にも、お出かけスポットなども発信している。

HONEY」は、ペットとの写真や動画をカレンダー形式で保存できるペットと飼い主の思い出管理サービスである。思い出の写真をまとめたフォトカードを自宅に届けてもらえるプランもある。

 

―シロップ社ではOMUSUBIの他に、ペット情報メディアの「ペトこと」や、ペットとの思い出保存アプリの「HONEY」の二つのサービスを提供されていますね。これら3つのサービス間でどのようなシナジーを構想しているのでしょうか?

 

山本 保護犬猫と飼い手をマッチングするOMUSUBIは飼い始めの窓口となり、飼い始めた後は「ペトこと」でペットに対する知識をつけてもらい、そして「HONEY」では思い出を残してもらう。

そういった一連の流れをシロップとしてサービス提供していくことで、最終的には飼っている人とペットが幸せになって欲しい。その一心で事業に取り組んでいます。

例えば、ペトことでは実際に獣医さんと協力して、正しい食事、健康管理などの飼い方に関する情報を発信しておりますし、どんどん私たちとしてカバーできる範囲を広げていきます。

そういった事業間のシナジーが、自分たちとしても最初から描けていたわけではなくて、よりペットとの暮らしを幸せにするために必要なことをやった結果、今の事業群になりました。

 

広報の山本氏と社員犬コルク

 


エンジニアとしてシロップへ参画した理由


エンジニア 渡邊直人(Watanabe Naoto)

2013年筑波大学大学院図書館情報メディア研究科修了。エンジニアリングの力で世界を変えるため、人間だけでなく動物にもコミットしようとシロップに参画。

 

渡邊 ペット業界には、まだまだITが入り込めていないですよね。僕がシロップのペット事業に携わろうと思ったのは、既存のものよりも、面白くて利便性の高いユーザー体験を提供できるんじゃないかと思ったのと、CEOである大久保の事業への熱意を知ったことがきっかけです。

何か問題解決をしたい時に、シロップのように小さなチームで取り組むべきだなと考えていました。

実際にシロップのペット事業に携わってからは、新しい技術を取り入れるにしても、自分で決められるところがとても良いと思っています。

なんとなく会社に入って、なんとなく言われたことをやる生き方よりも、自分でやりたい、やるべきだと思ったことを一つ一つ決めていけることはエンジニアとして最高に楽しいですよ。

 

エンジニアの渡邊氏

 

シロップでは、2017年3月現在求人活動を行っていないが、大久保氏に伺ったところ、「求人サイトで募集をかけていなくとも、一緒に動物のために立ち上がってくれる人と働きたいので、会社HPからのコンタクトでも、何かしらの直接コンタクトでも、アプローチしてほしい」と胸の内を語られた。ペットとの新しい暮らしを本気で考えるメンバーで挑みたい事業であるため、今のところまとまった採用は考えていないという。

 

シロップのWantedlyページ

 

ペット業界の今


世界で見る殺処分問題


山本 ペットショップでお金を払えば、誰でも飼えてしまうというのはちょっと違うのではないかと。飼育能力や命を預かる覚悟がない人に動物を渡してしまっているわけですよね。

 

−下記、殺処分にまつわる各国のデータをまとめました。

 

国立国会図書館によれば、日本の約8万3000頭という殺処分数と比べて、イギリス・ドイツ・アメリカの各国の犬・猫を合わせた殺処分数は下記の通りである。

ドイツ:殺処分は法律で認められていない。しかし、狩猟者による野良犬・猫の駆除が合法であるために処分されている犬猫が存在するが、公的な発表はない。

イギリス:保護施設に入居するうちの1割、年間約3万頭が殺処分されている。

アメリカ:保護施設に入居するうちの4 割、年間約270 万頭が殺処分されている 。

 


ペット関連スタートアップのマネタイズ


−今後、PetTechとしてマネタイズしていくにあたり、懸念は何でしょう?

 

大久保 参入するにあたり、ペット業界のマネタイズの難しい部分はなんだろうかと考えたときに、例えば犬の飼い主の中でも、小型、中型、大型の各レイヤーごとに趣向が異なることや、ペットの健康を害さない限り、一度購入し始めたペットフードを交換することがないことが考えられました。

ずっと同じものを与え続ける傾向があるので、リプレイスがないのです。それは大きな参入障壁ですよね。

そこで、シロップでは飼い始めの飼い主ペットの健康状態に関心のある飼い主という2種類のユーザーに着目しています。

そして、シロップの目指すものは飼育プラットフォームであり、その2種類のユーザーのニーズに応えることで、マネタイズ基盤をつくる。今はまだ、「OMUSUBI」で飼い始め、「ペトこと」で知識をつけてもらい、「HONEY」で思い出を残すところまでを提供していますが、今後さらにプラットフォーム化を進めていきます。

 

動物と働けるオフィス


動物がつくるチームの絆


会社HPより社員犬猫プロフィール

 

シロップには社員犬猫が3頭いる。保護犬出身のコルク氏・まりも氏と野良猫出身のリズモ氏だ。彼らと働けるオフィスもシロップの魅力のひとつ。残念ながら取材当日にはコーギーのコルク氏しか出勤しておらず、まりも氏とリズモ氏は在宅勤務が基本とのこと。

 

−社員犬、社員猫はどのように育て、接しているのでしょうか?

 

渡邊 チームみんなでこの子たちを育てています。社員犬猫はチームの架け橋的な存在ですね。仕事で詰まった際には、この子たちと遊ぶことでリフレッシュできるので助かっています。

あとは、コルクも実は保護犬だったんですよ。そういう境遇だったこの子たちが近くにいることで、「自分たちがより良いサービス開発をしなきゃ」というモチベーションにつながってますね。

そういう動機付けもあってか、企画側の要求に対して、やらずに「それはできない」とは言わないようにしています。

 

渡邊氏と社員犬コルク

 

−PetTechスタートアップへのジョインに際して、エンジニアとして気をつけていることはありますか?

 

渡邊 スタートアップ・ベンチャーの取り組みの中で、これだと言える正解はないと思います。

だからこそ、スピード感を持って取り組むためには、とにかくやってみて、それでもうまくいかなかったら、そこで初めてできないと言うようにすることが大切だと思います。

もちろん、やってみてできるようにするために、SNSで業界の動向を追ったり、QiitaやPodcastのRebuildengineer meeting podcastomoiyari.fmなどで、技術に関する情報や現場レベルでトライできるナレッジを収集をしたりするといった努力は、常日頃から必要です。

その中で、今の業務に活かせることはないか? といつも考えています。

そして、自分のエンジニアリングのスキルを高めることが、最終的に多くの動物たちを救うことにつながると信じています。

やりたいこと・取り組みたいことに、主体的に取り組める。それがシロップのようなベンチャーの良さだと思います。

 

おわりに

コルク氏によるコードレビュー?およびインタビュー風景

 

人と動物のより良い暮らしのために立ち上がったシロップ。

今回のリサーチでは、社員犬猫たちのコードレビューの品質を明らかにすることはできなかったが、取材中に周囲を駆け回っていたコルク氏の鼻息の荒さからは、彼も社員犬として今のペット業界に物申したいことがあったのだろうと想像できる。

余談だが、シロップ社員になると、獣医師でもある社外取締役が院長を務めている動物病院にて、20%割引で診察を受けることができる福利厚生を味わえるという。

飼育プラットフォームの構築を目指すシロップの取り組みを今後とも追っていきたいと思う。

 

 

 

 

株式会社シロップ

HP:http://syrup.jp.net/

シロップが目指す「共に生きる社会」とは、「動物が」人のために生きる社会ではありません。人が動物のために、動物が人のために生きる社会です。
しかし現状は、家族として迎えた動物を捨てたり、劣悪な飼養環境に置いたり、果ては「殺処分」という、動物の命すら尊重できない社会になっています。
シロップは、まず「人が」動物と正しく向き合える社会をつくり、その先の未来として、人と動物が等しく向き合い「共に生きる社会」の実現を目指します。